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旅、映画、食べ物、哲学?

哲学

あえて、冒険に出るということ

毎年、年が明けるタイミングで、このブログを更新していた。 新年の抱負というとなんだか堅苦しくて古臭いが、昨年の自分を振り返り、新しいテーマを決めるのに新年はもってこいだったからだ。 ところが今年はと言えば、元旦も過ぎ、節分も過ぎ、旧正月も過…

ラジオを聴いていたら、実際に見たヘンな設定の夢をリスナーに募集する企画をやっていた。ボウリングの玉になってしまう夢、砂に埋まる夢…どれも奇妙奇天烈で、そしてちょっと怖いものが多い。確かに夢はちょっと怖いものである。 夢、というと、思い出すの…

心の音楽〜「神様メール」〜

「神が愛であふれたお方なら、なぜ世界は苦しみに溢れているのか?」 そんな問いがキリスト教が浸透したヨーロッパで強く問い直されるようになったのは1755年に起こったリスボン大震災のときからだったという。 ベルギー映画「神様メール(Le Tout Nouveau T…

一号線を「南下」せよ 〜霜月江戸前一巡道中・其一〜

東京湾を一周してみよう、と思いたったのはいつのことだったろう。 私にとって旅することは、一種の薬のようなものだった。疲れを取る薬では無い。好奇心を満たすためだけでも無い。好奇心に関してはそう言う側面もある。だが、私にとって旅することは、なん…

異邦人たること〜安部公房「内なる辺境」を読んで思い出したこと〜

大学一年生の時、プラトンの『ソクラテスの弁明』を読まされた。そしてその内容について、軽く発表を、というわけだ。もちろん一気に全部読むわけではなく、何回かに分けて読むわけだが、私は運が悪いことに、初回に当たってしまった。とはいえ、最初に読む…

1+1+1+...+1=1

カレーを作ることにハマっている。ルーを買ってきて、煮込むわけではない。南アジア系の人が経営しているショップでスパイスを買い込み、動画サイトで理解できないヒンディーやウルドゥーやベンガリーでのレシピ動画を見ながら、レシピを確認し、できるだけ…

時計が壊れた

昨日、時計が壊れた。 私は自分の部屋に掛け時計を置いていて、時間の確認はたいていの場合その時計でやっているのだが、その時計が動かなくなった。 壊れたというと、語弊があるのかもしれない。 というのも、時計が壊れたというよりむしろ、電池が切れてい…

「すべき」と「したい」、あるいはやる気待ち

朝、めざめても、起き上がる気になれない。起き上がってしまえば、また消費される1日が始まるからだ。 暇なのではない。暇ならいい。だが残念なことに、心の奥で、何かが常に疼いているのだ。さあ、すべきことをしなさい。君にはすべきことがある。それをし…

反抗と悲しみ

昔、国歌を聞くのにはまっていたことがあった。YouTubeにあるフィリピン国歌は、フィリピン政府かなにかの公式の動画であり、フィリピン独立に関わるシーンを集めた一種のプロモーションヴィデオになっているのだが、その中で印象的なシーンがあった。 スペ…

自分探しの旅

インドに自分なんていないんだから、自分探しの旅は無意味だという意見がある。確かにそうかもしれない。なにせ、自分というものは常にそばにあるからだ。インドに行って、アフリカに行って、世界を一周して、シベリア鉄道に乗って、アメリカ横断して、見つ…

ちょっと違う見方の練習

それはカナダに行ったときのこと。 モントリオールのショッピングモール回りをする企画には興味が持てなかったので、わたしは一人、街に出ることにした。適当に歩いたりしながら、わたしはある公園にたどり着いた。今でも名前を覚えているが、それはサン・ル…

家に帰らないといけないのか

わたしはレストランの予約もしないし、映画のオンライン予約もめったなことがないとしない。なぜなら、予約をすれば、心配事はひとつ消えるかもしれないが、その代わり義務がひとつ増えてしまうからだ。どこかに行かなければいけない。自由な気持ちで歩いて…

本質と音楽〜哲学所感3〜

まずあらかじめ断っていくが、今回は少々突飛なことを言おうと思う。日常生活で普通とされていることを裏切ろうとしているのである。だがそれは必要な裏切りだ。そして素晴らしい裏切りだと私は信じている。 その前に、ちょっと話を振り返っておこう。第一回…

スキマ時間と安息日

ここ最近ずっと違和感を覚えている言葉がある。それは、「スキマ時間」だ。CMを見ると、よくこんな言い方がされているのが耳につく。「スキマ時間を利用して……」「そのスキマ時間もったいない!」それはだいたい、ニュースアプリだったり、バイトアプリだっ…

幻想の家

徐々に明かりが消え、うっすらと画面が広がるのが見える。 しばらくすると画面は輝き、そして物語が始まる。 私たちはいつの間にか物語の中にいて、物語となっている。 夢か現か、現実か幻想か、そのはざまで揺れ動く。 それが映画だ。というか、映画館だ。 …

立場と発言は切り離せるか

二週間前くらいだったと思うが、「立場と発言は切り離せるか」というテーマで哲学対話を行った。例えば、警察官の子供が、もしとても道徳的ないし法的に正しいことを言ったとする。そうすると、周りの人は、「おとうさん警察官だもんね」というだろう。一方…

映える写真、臭わない記憶

時々、Facebookなどを見ると、誰かの旅行先の写真が載っていることがある。稀に、そうした写真の一部は、私も以前行ったことのある土地のもので、そうすると、ちょっと見てみようかなという気持ちになる。だが大抵の場合、言いようもない違和感が待ち構えて…

『最後の審判』とカツレツ

誰しも教訓となることの一つや二つある。かのシャーロック・ホームズも、自らが尊大な振る舞いをしたら、自身の推理が外れた事件を思い出すために「ノーバリ」という地名を耳元で囁いてくれ、と言っている。エルキュール・ポワロにとってのそれは「チョコレ…

イヤフォンについて

ポータブル型の音楽機器が発明されて、私たちはどこにでも音楽を持ち運ぶことができるようになった、と言われる。それまでは音楽はでかいスピーカーから流れるものだった。いやもっと昔に戻れば、楽器から発せられるものだった。そういう意味で、確かに現代…

An Invitation from Mr Blue Sky and Madame Pluie

An Invitation from Mr Blue Sky 例えば、家の外に出たら空が見えるだろう。その時、空が雲ひとつなく青かったとする。青かったというのは正しくもあり、間違いでもある。色のニュアンスは言葉で説明しきれない。だからここで「青かった」というのは、公認さ…

プロメテウスの理性〜哲学所感2〜

人間に特徴的なものは何か。これはいろいろな人が問うてきた問いである。 かつてプラトンが、「人間は、毛のない二足歩行の動物である」と言ったらしいが、それに対し、ディオゲネスという男が毛をむしった鶏を持ってきて、「おいみんな、プラトン先生はこれ…

存在と賭け〜哲学所感1〜

わたしは、大学四年間と大学院での現状半年間、哲学科に属してきた。しかし最近、いろいろな人の考えを学ぶうち、果たして自分がどんなことを考えているのかがよくわからなくなってしまった。そこで、このブログを使って、たまに、ちょっと堅苦しくはあるが…

殺伐とした叡智の町〜ソフィア①〜

バスを降りた瞬間、違う世界にいると悟った。まず空気が違う。突き刺すように朝の空気は寒い。ギリシアの暖かい気候とは違う。それに、バスターミナルのカフェテリアのおばちゃんは無愛想で、英語が通じない。そんなことは当たり前である。ここは英語圏じゃ…

不滅のアテナイ

アクロポリスの丘を降りて、私たちは行くあてもなく、日差しの差し込むアテネの観光地を歩いた。出てきたのはバスの停車場などがあるところのようで、ガランとしている。無数のシャボン玉を作る大道芸人がいて、そのシャボンに包まれながら、まるでニンフか…

運を天に任せ

散歩に出よう。 そう思ったは良いが、行き先が見当たらない。最近はよくあることだ。色々歩くようになって、あそこもここも行ったことがあるという状況なのだ。もちろん、本当に行ったことがあるかは定かではないし、東京も広いのだから、全部行ったなどと豪…

時間と時の流れのせめぎ合い

前々から思っていることなのだが、私たちは二つの時間を生きているのかもしれない。一つは社会的な時間で、もう一つは私の心の奥を流れる時の流れである。そのようなことをいうと、難しいことを言っていると思うかもしれない。しかし、実はそこまで変なこと…

旅と自由

ブログに書いたかどうかは忘れたが、以前、散歩中に迷ったことがあった。 その日は大学の授業が13時30分からあったのだが、昼食の海鮮丼定食を待っていたら、授業に5分ほど遅刻する時間になってしまっていた。その授業に魅力をあまり感じなくなってきていた…

18都市目:モスクワ(2)〜До встречи!〜

トゥヴェルスカヤ通りの付け根にある革命広場駅から、スモレンスカヤ駅を目指す。相変わらずエスカレーターが深い。ゆったりとした旅なら良いが、アルバート通りでパッと食べて、クレムリンに戻ってきたかったので、これが鬱陶しい。革命広場駅は、装飾が無…

16都市目:パリ(1)〜再会〜

この度の実質的最後の滞在地パリは、再会の街であった。そもそもパリという街自体、再会の相手だった。今まで巡ってきた街は、リヨンを除けばどこも初めての場所だった。しかしパリは4度目になる。そしてそんな街でわたしは5度にわたる再会の場に立ち会った…

14都市目:ラ岬〜地の果て〜

目を覚ますと朝だった。まだ7時だ。どうやら熱は出ていない。体の痛みも多少は引いている。わたしはとりあえずパッキングして、ラ岬へ向かう最初のバスに乗ることにした。 チェックアウトをすると、昨日はぶっきらぼうだったホテルのお兄さん=バーの店員=タ…