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旅、映画、食べ物、哲学?

食べる

ヴァンショー修行〜クリスマスによせて〜

日本には酒を温める熱燗があるが、ヨーロッパにはワインをあたためたヴァンショーがある。英語ではホットワイン、ドイツ語ではグリューヴァインという。といってもただワインを温めるだけではない。クローヴ、シナモン、スターアニス(八角)などのスパイス…

アンダーグラウンド・タイフード

入ってはみたいが、入りづらい店というものがある。 それは常連でいっぱいだからだったり、店主が怖そうだからだったり、ドアがガッチリと締まっていたからだったり、閑静な住宅街の奥まったところにあるからだったりする。そういった店には人を寄せ付けない…

1+1+1+...+1=1

カレーを作ることにハマっている。ルーを買ってきて、煮込むわけではない。南アジア系の人が経営しているショップでスパイスを買い込み、動画サイトで理解できないヒンディーやウルドゥーやベンガリーでのレシピ動画を見ながら、レシピを確認し、できるだけ…

創造的食文化

ちょっとくだらない話をしよう。 昔からずっと思っていたことなのだが、人類が忘れている驚異的な英雄がいる。カエサルやナポレオン、あるいはイエスやブッダなどを超えて、今でも多くの人々に恩恵を与え続けている英雄だ。私もその人の名前を知らない。一人…

Добър Спомен〜ソフィア③〜

ソフィアでやることはもはや枯渇していた。だがホテルもとっていないので、帰るところもない。帰るところがないというのはゾクゾクを超えてワクワクするものだが、こういう場合は困ってしまう。どこか一休みできるカフェはあるか。そう思いながら眺めてみて…

『最後の審判』とカツレツ

誰しも教訓となることの一つや二つある。かのシャーロック・ホームズも、自らが尊大な振る舞いをしたら、自身の推理が外れた事件を思い出すために「ノーバリ」という地名を耳元で囁いてくれ、と言っている。エルキュール・ポワロにとってのそれは「チョコレ…

Синьо Небе〜ソフィア ②〜

NDKこと、国立文化宮殿は、繁華街になっているヴィトーシャ通りをまっすぐ行ったところにある。観光地の割には人影がまばらなこの通りは、今まで歩いてきたソフィアの地区と比べれば、穏やかな空気が流れており、いい感じである。レストランが軒を連ねる道の…

殺伐とした叡智の町〜ソフィア①〜

バスを降りた瞬間、違う世界にいると悟った。まず空気が違う。突き刺すように朝の空気は寒い。ギリシアの暖かい気候とは違う。それに、バスターミナルのカフェテリアのおばちゃんは無愛想で、英語が通じない。そんなことは当たり前である。ここは英語圏じゃ…

And Then, There were None〜アテネの孤独〜

一人旅が性に合っていると思っていた。それは多分そうなんだと思う。だが、今まで7人もいたのが、一気にいなくなるとなると話は変わってくる。ソフィアに発つ日、私は孤独のどん底に突き落とされ、不安に震えた。一人で台風を台湾で二つもやり過ごし、バルセ…

η νέα Αθήνα〜ヨーロッパの祖にしてヨーロッパならざる場所〜

アゴラをあとにした後、私たちが入ってみた教会は今までに見たことのない風情であった。正教会というと、私は二度目になるが、事実上初めてと言えるだろう。というのも、以前中に入ってみたモスクワの聖ヴァシリー大聖堂は、中に部屋がたくさんあって、正直…

不滅のアテナイ

アクロポリスの丘を降りて、私たちは行くあてもなく、日差しの差し込むアテネの観光地を歩いた。出てきたのはバスの停車場などがあるところのようで、ガランとしている。無数のシャボン玉を作る大道芸人がいて、そのシャボンに包まれながら、まるでニンフか…

南米かっ!〜アテネの夜の冒険〜

アテネのホテルはびっくりするくらいいいところだった。一人三千円くらいだが、中高級ホテルの風格がある。それに真っ先に気付いたのは、着いて早々ウェルカムドリンクとしてしぼりたてのオレンジジュースが配られた時である。暑かったし、ありがたい。ウェ…

チケットとスヴラキと優しさ〜パトラ〜

パトラの港の使い勝手はバーリのそれと比べて格段に良かった。船から降りて少し歩いたところにシャトルバス乗り場があり、そのバスに乗れば、すぐに中心部まで運んでくれる。ただ、もしかすると、気づかなかっただけでバーリにもあったのかもしれない。 パト…

素朴な魅力〜バーリ・イタリアの旅の終わり〜

「カステル・デル=モンテに行くにはどうしたらいいですか? 確か冬はタクシーしかないって」 「そうだね、遠いよ。バーリの町には来たことあるのかい?」 「いえ、初めてですが」 「じゃあ、バーリを見なさい。港もあるし海も綺麗だ。今日は天気もいい」 ロ…

まだ死ねない〜ナポリ〜

サンタンジェロ城を一人で見た後、私は三人の友人とナポリへと向かった。 イタリアはこれで3度目になるが、いわゆる南イタリアには一度も行ったことがなかった。ナポリ行きを決めたのはそれが理由である。一人でも行くつもりだったが、なんやかんやで四人に…

最初の晩餐〜ローマ(1)〜

ローマは思ったより寒かった。 以前一度冬に訪れたことがあったが、あれはミラノやヴェネツィアなど北部の町を訪ねた後だったからか、心なしか、暖かく感じた。だが、ローマはローマで寒い。空気はしっとりしていて、ヨーロッパ特有のキーンとした寒さではな…

一瞬の北京

この、明らかにクレイジーと言える旅程は、完全に私の気の迷いから発したに過ぎない。常々夢想してきた「男の子の夢」ともいえようものを実現させてみただけだ。つまり、ヨーロッパを旅した後に、「ああ、帰りたくないなぁ、このまま東南アジアにでもいって…

アジアの香り〜大阪〜

初めての大阪だった。 というと、驚かれることが多いが、国内旅行そのものが、3年ほど前に行った函館以来だったのだから、大阪が初めてでもおかしくはない。だが、不思議なのは、私は関西系のルーツしか持っていないにもかかわらず、大阪という土地に行った…

餃子は回る

実は昨日、父の誕生日があって、そのお祝いということで母とトルコ料理を作った。できはなかなかで、本物を食べたことあるのは私だけだったが、再現度としては90パーセントくらいはいけていたと思う。作ったのは、トルコの餃子マントゥと、レンズ豆のスープ…

カレーなる道

今年から大学でヒンディー語を始めた。理由は割とテキトーで、今までやったことがなかったのと、インドを背負う大言語であるのと、文字の関係で自力での学習が難しそうだと判断したからだった。しかしこれが思いの外楽しく、そこから芋づる式にインドにはま…

18都市目:モスクワ(2)〜До встречи!〜

トゥヴェルスカヤ通りの付け根にある革命広場駅から、スモレンスカヤ駅を目指す。相変わらずエスカレーターが深い。ゆったりとした旅なら良いが、アルバート通りでパッと食べて、クレムリンに戻ってきたかったので、これが鬱陶しい。革命広場駅は、装飾が無…

18都市目:モスクワ(1)〜Снова в СССР?〜

シャルル・ド・ゴール空港からアエロフロートで空を飛び、モスクワはシェレメチエヴォ空港まで三時間。夜も遅いフライトなので多少は眠ったが、時差を換算していなかったがために、5時間寝るつもりが3時間しかなく、寝不足感は否めない。フライト中膝の上に…

16都市目:パリ(4)〜Time To Say Goodbye〜

ジャズクラブでパリの夜を締める前、私は移民街散歩を敢行した。もともと移民街という場所が好きだった。それは単純にこの前パリに来た時に移民街に泊まっていたからかもしれない。前回のパリでは、私はパリ北駅からより北上し、インド人街を抜けたところに…

16都市目:パリ(3)〜Comme le temps passe〜

パリのアパルトマンを出た後は、哲学科としては外せない、パスカルの故郷「クレルモン=フェラン」へ行く予定だった。しかし、パリのアパルトマンで、皆気が変わってしまった。パリは五日では回れないのだ。さらにパリは魅力的だった。だから、私たちはパリの…

16都市目:パリ(2)〜俺たちのヴォージラール、そしてエッフェル塔〜

前にも書いたが、私たちはパリにアパルトマンを一室借りて、5日間住んでいた。日本の「パリ生活社」という会社を使ってネットで予約したため、説明書きが日本語だったし、問題もなく入居できたのがよかった(ちなみに、実は現在私は友人と京都の一軒家に三日…

17都市目:ロンドン(4)〜Let it be〜

ヨーロッパの強烈な日差しを浴びながら、国会議事堂を横目にウェストミンスター橋を渡った。渡りきるのは初めてだ。この先にはサウスバンクと呼ばれる地区があり、有名なシェイクスピアのグローブ座もある。ロンドンの新名所で、私は観たことがなかったシェ…

17都市目:ロンドン(1)〜First Train to London/Here comes the sun〜

ロンドンは3度目である。シャーロックホームズやハリーポッターの世界にどっぷり浸かっていた小学校6年の夏に家族で行ったのと、それから高校一年の時にアスコットに語学研修で行った時のエクスカーションで行ったのが、わたしのロンドン経験の全てだ。しか…

16都市目:パリ(1)〜再会〜

この度の実質的最後の滞在地パリは、再会の街であった。そもそもパリという街自体、再会の相手だった。今まで巡ってきた街は、リヨンを除けばどこも初めての場所だった。しかしパリは4度目になる。そしてそんな街でわたしは5度にわたる再会の場に立ち会った…

15都市目:モンサンミッシェル(2)〜異様な城塞〜

モンサンミッシェルがそびえ立っている。塔に掲げられた旗はフランスとノルマンディー、ブルターニュとは違う歴史を宿している。とにかく風が吹きつけてくる。そりゃそうだ、城の向こう側は海なんだから。 モンサンミッシェルは山である。頂上にある御本殿が…

15都市目:レンヌ(2)〜黄昏の暑く温かい街〜

車通りの多い駅前の通りを歩き、途中で右に曲がると、明らかに新市街だなという雰囲気の通りに出た。一応、ホテルのおじさんナビに従って歩いている。その道には、おじさんが言ったように中華料理屋などもあり、なんとなく、移民街を形成しているようだった…