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旅、映画、食べ物、哲学?

あえて、冒険に出るということ

毎年、年が明けるタイミングで、このブログを更新していた。 新年の抱負というとなんだか堅苦しくて古臭いが、昨年の自分を振り返り、新しいテーマを決めるのに新年はもってこいだったからだ。 ところが今年はと言えば、元旦も過ぎ、節分も過ぎ、旧正月も過…

空白

なんというか、余裕がない1年間だった。 少しずつ新しいことを始めた一年でもある。 まず、新宿の大久保に引っ越し、一人暮らしを始めた。5月のことである。一人暮らしをはじめると、実家暮らしの便利さが身に染みるというが、私の場合はサバイバル能力が高…

再起

またあっという間に一年が終わり、新しい年になった。 意識は時に緩やかに、時に急いで進んでいく。年というのはそこに嵌め込まれる人為的な制度に過ぎない。本当は12月32日と1月1日に違いなんてない。だけど、ぼーっとしているうちに繰返しの単調な生活を漫…

鳥籠のクリスマス

長らく、こちらのブログの更新ができずにいた。 理由は一つ。今年に入って、noteという媒体で文章を書くようになったからだ。その試用期間のために、こちらはお休みしていた。もちろん、私の怠惰な性格のせいもあって、noteも二ヶ月ほど毎週二回投稿してみた…

まだ『天才』ではない

私は『天才』という人の存在をあまり信じていない。 いや、それは嘘だ。天才は確かにいる。 ちょっと子供じみた表現を許していただけるならば、私はすべての人が天才なのだと思っている。だけど、いわゆる『天才』と言われている人は、自分の中にある天才的…

思いつき

去年11月の終わりに成田山まで行った時のことだ。あのころわたしは、お寺や神社に行くと、決まって、「私の道をお示しください」と唱えていた。 今仕事としてしていることは自分にとって一生続けたいこととは思えない。だが、もっと創造的なことを、もっと一…

寛容のレッスン〜クリスマスに〜

今年のクリスマスは、家族でセッションをした。父がフルートを吹き、母がピアノを弾き、私が音程の悪いヴァイオリンを鳴らした。 クリスマスイヴの昨日はそこまでひどくない音を鳴らせたが、今日はあまりかんばしくない。腕やら体やらが硬いようで、うまく音…

ヒッポドロームのおじさん

イスタンブル旧市街のど真ん中に、スルタンアフメット地区はある。 泣く子も黙るアヤソフィアにブルーモスクといった「イスタンブルといえばコレ」的な観光地の数々に取り囲まれて、ヒッポドロームという広場がある。この広場がスルタンアフメット地区の中心…

受動のレッスン:ヴァイオリンとカレー

今年になってヴァイオリンを始めた。 そういうことにしている。 本当は中学生の時に習っていたことがあった。シャーロックホームズが好きだったし、家には曾祖父さんの形見のような古い鈴木ヴァイオリンがあったからである。だけど、ピアノを習っていた時も…

無口な海

私の経験上、海が何か答えを出してくれたということはまずない。何か悩みを抱えて海までたどり着き、海を眺めるうちに、答えが出ることはほとんどない。 だけど、海は口数を減らしてくれる。それだけは確実なことだと思う。つまり、常日頃私たちはしゃべり過…

フェンシングのこと、あるいは風向

今から、私はとんでもなく無謀なことをしようとしている。 スポーツ観戦記も書いたことがないのに、昨日初めてきちんと見た競技の観戦記のようなものを書こうとしているのだ。本当ならやめた方がいいのかもしれないが、書きたくなるほど熱中したのだからしょ…

オリンピックが始まった

1 先日、オリンピックが始まった。私にとっては初めての東京オリンピックである。いや、実を言えば、自国開催のオリンピック自体が、物心ついてから初めてだ。 私はオリンピックの開会式というものが好きで、毎回見るようにしている。ただ、確か前回のリオ…

短文:ドミトリー

私はドミトリーというものがあまり好きではない。 そういう風に堂々と言えるようになったのもわりと最近のことである。 ドミトリーというのは、安宿の一種で、二段ベッドのようなものが一部屋に並んだ作りをしている。バックパッカーといえばドミトリーに泊…

短文:新宿の猫

数ヶ月ぶりにTwitterを使い始めたら、世の中を騒がしていたのは巨大な猫だった。化け猫の類ではない。立体的な広告だそうだ。 それはどうやら新宿のビルの掲示板のようなところに出現しているらしい。評判も上々で、迫力があるという。 新宿方面に行く予定は…

湯島聖堂に入る、また楽しからずや

今年の春だったか、フランスの国立行政学院、通称ENAが廃止になるというニュースがあった。 フランスといえば、「自由、平等、博愛」。その建前はもちろん生きているとはいえ、フランスの政治の中心は、ENAを出たエリートがほとんどで、そこに批判が集まって…

柳川横町を探せ

日本の歴史の中で、名前がちょくちょく登場するにもかかわらず、知名度も人気度もさほどではない人物。それが榎本武揚である。私はそんな榎本武揚という人物に高校時代からハマっている。 ここで榎本武揚話をくわしく続けるつもりはない。というのも今回は、…

馬喰町の謎

バクロ町という場所がある。 馬を喰らう、と書いて、バクロと読む。随分と禍々しい名前である。それだけに、どんな由来があるのか、無性に気になってしまった。 *************************************** 三週間ほど…

絵を描くということ

絵を描くのは小さい頃から好きだった。小さい頃に習っていたピアノなどとは違い、教わることもなく、義務に成り果てることもなく、私は絵を描くのが好きだった。だからほとんど、描きながら、試行錯誤しながら描いていくというスタイルである。 私は基本的に…

暗夜行路〜霜月江戸前一巡道中・其三〜

蒲田のタリーズコーヒーを一歩外に出た時、足の異変に気がついた。踵の当たりが擦れていて痛い。靴で圧迫された足の側面もジンジンしている。こんなにやわだったのかと、自分の力無さにため息を打ち、とにかく多摩川を越えるくらいのことはしようと前へ進ん…

スターウォーズにまつわるあれこれ

「スターウォーズ」を最初に観たのは、小学生の時だったと思う。正確に学年だとか、年齢だとかは思い出せないが、両親がエピソードIV〜エピソードVIの入ったDVDボックスを買ってきて、私はそれで、初めてスターウォーズを観たのだ。 スターウォーズの作りは…

「神様の思し召し」

「これこそ奇跡です」 「奇跡などない。すべて私の力だ」 外科医トンマーゾが、患者の家族の言葉を、このように切って捨てる。トンマーゾは天才的な腕を持つ外科医だが、傲慢とも言えるほどに自分の力を信じている。 そんな、トンマーゾには二人の子供がいる…

音楽の勉強、音楽の解読、音楽の喋り

音楽の勉強を始めた。 いわゆる楽典だとか、和声法だとか、対位法だとかいった類のやつである。 ちょこちょこと音楽を作るのに、修士論文を書き始めたあたりからハマりだしていたのだが、どうしても勉強が必要になった。というのも、私には、コードがわから…

ラジオを聴いていたら、実際に見たヘンな設定の夢をリスナーに募集する企画をやっていた。ボウリングの玉になってしまう夢、砂に埋まる夢…どれも奇妙奇天烈で、そしてちょっと怖いものが多い。確かに夢はちょっと怖いものである。 夢、というと、思い出すの…

心の音楽〜「神様メール」〜

「神が愛であふれたお方なら、なぜ世界は苦しみに溢れているのか?」 そんな問いがキリスト教が浸透したヨーロッパで強く問い直されるようになったのは1755年に起こったリスボン大震災のときからだったという。 ベルギー映画「神様メール(Le Tout Nouveau T…

街の荒野で 〜霜月江戸前一巡道中・其二〜

タイカレーを食べて、無知の無知から来たエゴの精算にかかる。一号線をそれて、私は一路品川へと向かうことにした。現在地は五反田。そこから品川に行くには、五反田駅のすぐそばを流れる目黒川を下ればいいようだった。 目黒川。川を下る船は休業中。 ハイ…

陶器のように

私は陶器作りに詳しいわけではない。昔一度だけ、修学旅行で山形県に行った際、体験でちょっと触れた程度だ。そして今思えば、あの時の私は陶器作りをしていなかったに違いない。あの時は、土を曲げていただけだったからだ。 どこで聞いたのかは思い出せない…

ヴァンショー修行〜クリスマスによせて〜

日本には酒を温める熱燗があるが、ヨーロッパにはワインをあたためたヴァンショーがある。英語ではホットワイン、ドイツ語ではグリューヴァインという。といってもただワインを温めるだけではない。クローヴ、シナモン、スターアニス(八角)などのスパイス…

一号線を「南下」せよ 〜霜月江戸前一巡道中・其一〜

東京湾を一周してみよう、と思いたったのはいつのことだったろう。 私にとって旅することは、一種の薬のようなものだった。疲れを取る薬では無い。好奇心を満たすためだけでも無い。好奇心に関してはそう言う側面もある。だが、私にとって旅することは、なん…

「普通の暮らし」〜「トゥルーマンショー」を観た〜

いろんな見方をできる映画というのがある。私が昨日見た「トゥルーマンショー」もそうだろう。というのも、私がこの映画を見た動画配信サイトの紹介文には「情報化社会」についての言及があった一方で、沢木耕太郎の映画評『世界は使われなかった人生で溢れ…

KEEP YOUR HANDS ''ON'' 最強の世界

漫画がヒットすると、決まってアニメ化や実写化の話が舞い込む。キャストも豪華になって、宣伝も大いに行われる。だが悲しいかな、大抵の場合はうまくいかない。「漫画原作の実写」というと、今では一種「地雷」のような扱いを受けるし、その主人公を演じる…