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旅、映画、食べ物、哲学?

プロメテウスの理性〜哲学所感2〜

人間に特徴的なものは何か。これはいろいろな人が問うてきた問いである。 かつてプラトンが、「人間は、毛のない二足歩行の動物である」と言ったらしいが、それに対し、ディオゲネスという男が毛をむしった鶏を持ってきて、「おいみんな、プラトン先生はこれ…

Синьо Небе〜ソフィア ②〜

NDKこと、国立文化宮殿は、繁華街になっているヴィトーシャ通りをまっすぐ行ったところにある。観光地の割には人影がまばらなこの通りは、今まで歩いてきたソフィアの地区と比べれば、穏やかな空気が流れており、いい感じである。レストランが軒を連ねる道の…

存在と賭け〜哲学所感1〜

わたしは、大学四年間と大学院での現状半年間、哲学科に属してきた。しかし最近、いろいろな人の考えを学ぶうち、果たして自分がどんなことを考えているのかがよくわからなくなってしまった。そこで、このブログを使って、たまに、ちょっと堅苦しくはあるが…

殺伐とした叡智の町〜ソフィア①〜

バスを降りた瞬間、違う世界にいると悟った。まず空気が違う。突き刺すように朝の空気は寒い。ギリシアの暖かい気候とは違う。それに、バスターミナルのカフェテリアのおばちゃんは無愛想で、英語が通じない。そんなことは当たり前である。ここは英語圏じゃ…

And Then, There were None〜アテネの孤独〜

一人旅が性に合っていると思っていた。それは多分そうなんだと思う。だが、今まで7人もいたのが、一気にいなくなるとなると話は変わってくる。ソフィアに発つ日、私は孤独のどん底に突き落とされ、不安に震えた。一人で台風を台湾で二つもやり過ごし、バルセ…

η νέα Αθήνα〜ヨーロッパの祖にしてヨーロッパならざる場所〜

アゴラをあとにした後、私たちが入ってみた教会は今までに見たことのない風情であった。正教会というと、私は二度目になるが、事実上初めてと言えるだろう。というのも、以前中に入ってみたモスクワの聖ヴァシリー大聖堂は、中に部屋がたくさんあって、正直…

不滅のアテナイ

アクロポリスの丘を降りて、私たちは行くあてもなく、日差しの差し込むアテネの観光地を歩いた。出てきたのはバスの停車場などがあるところのようで、ガランとしている。無数のシャボン玉を作る大道芸人がいて、そのシャボンに包まれながら、まるでニンフか…

死ぬまで幸福かどうかなんてわからない〜地下鉄事件とアクロポリス〜

朝になると、街の様子がよく見えるようになった。ホテルを出て、考古学博物館の横を通ると、手榴弾やら催涙弾やらが、熟れたオレンジと一緒に落ちている。やはり昨日の銃声は本物のようだ。街を歩くと、壁という壁に落書き。まるで、耳なし芳一の如しである…

南米かっ!〜アテネの夜の冒険〜

アテネのホテルはびっくりするくらいいいところだった。一人三千円くらいだが、中高級ホテルの風格がある。それに真っ先に気付いたのは、着いて早々ウェルカムドリンクとしてしぼりたてのオレンジジュースが配られた時である。暑かったし、ありがたい。ウェ…

ἐκ Πατρῶν εἰς ᾽Αθῆνας〜パトラからアテネへ〜

パトラからアテネまでは電車が断絶している。だから、中間地点のキアトまでバスで接続しないといけない。そのバスはというと、パトラ駅の前から出ていた。さっと食事を済ませ、バス停まで行くと、運転手はむすっとした顔で、早く荷物を入れろという。もう出…

チケットとスヴラキと優しさ〜パトラ〜

パトラの港の使い勝手はバーリのそれと比べて格段に良かった。船から降りて少し歩いたところにシャトルバス乗り場があり、そのバスに乗れば、すぐに中心部まで運んでくれる。ただ、もしかすると、気づかなかっただけでバーリにもあったのかもしれない。 パト…

Εδώ έρχεται ο ήλιος〜地中海航路 その2〜

「乗客の皆様。まもなく、我々はイグニメッツァ港に到着いたします。乗客の皆様はお忘れ物のありませんよう、お降りください」 朝5時30分ごろ、やけに大きな音のアナウンスで私は目を覚ました。降りなければいけないのか? でもイグニメッツァといえば、コル…

Italia Bella Ciao!〜地中海航路 その1〜

祖父は船会社を営んでいた。そのせいか、船の旅というものに漠然とした憧れがある。船はすごい。この地球の七割が海だというから、船を使えば脚を使う以上にどこまでも世界を巡ることができる。 船体験は今年の3月までは、3度ほどあった。まずは伊勢の方から…

素朴な魅力〜バーリ・イタリアの旅の終わり〜

「カステル・デル=モンテに行くにはどうしたらいいですか? 確か冬はタクシーしかないって」 「そうだね、遠いよ。バーリの町には来たことあるのかい?」 「いえ、初めてですが」 「じゃあ、バーリを見なさい。港もあるし海も綺麗だ。今日は天気もいい」 ロ…

まだ死ねない〜ナポリ〜

サンタンジェロ城を一人で見た後、私は三人の友人とナポリへと向かった。 イタリアはこれで3度目になるが、いわゆる南イタリアには一度も行ったことがなかった。ナポリ行きを決めたのはそれが理由である。一人でも行くつもりだったが、なんやかんやで四人に…

時の交差路あるいは永遠の都〜ローマ(2)〜

ローマは永遠の都と称される。 伝説によれば、紀元前753年にロムルスとレムスという双子の兄弟によって建設されたローマは800年後には類稀なる地中海世界の大帝国の首都となり、その後衰退するものの、中世の間は西方キリスト教の頂点ローマ教皇庁の拠点とし…

最初の晩餐〜ローマ(1)〜

ローマは思ったより寒かった。 以前一度冬に訪れたことがあったが、あれはミラノやヴェネツィアなど北部の町を訪ねた後だったからか、心なしか、暖かく感じた。だが、ローマはローマで寒い。空気はしっとりしていて、ヨーロッパ特有のキーンとした寒さではな…

一瞬の北京

この、明らかにクレイジーと言える旅程は、完全に私の気の迷いから発したに過ぎない。常々夢想してきた「男の子の夢」ともいえようものを実現させてみただけだ。つまり、ヨーロッパを旅した後に、「ああ、帰りたくないなぁ、このまま東南アジアにでもいって…

運を天に任せ

散歩に出よう。 そう思ったは良いが、行き先が見当たらない。最近はよくあることだ。色々歩くようになって、あそこもここも行ったことがあるという状況なのだ。もちろん、本当に行ったことがあるかは定かではないし、東京も広いのだから、全部行ったなどと豪…

時間と時の流れのせめぎ合い

前々から思っていることなのだが、私たちは二つの時間を生きているのかもしれない。一つは社会的な時間で、もう一つは私の心の奥を流れる時の流れである。そのようなことをいうと、難しいことを言っていると思うかもしれない。しかし、実はそこまで変なこと…

2019年宣言

年が明け、西暦2019年が始まった。 一昨年はいろいろなことがあった年だったが、去年はいろいろなことが降りかかってきた年だった。いろいろなことが降りかかりすぎて、踊らされるばかりの年だった。そう、間違いなく、去年は私は主体的に踊ってはいなかった…

On "Happy Christmas"

確か去年のことだったと思うが、トランプ大統領が「Happy Holidays」ではなく「Happy Christmas」といったことで問題になった。なぜかというと、現在アメリカでは、特にリベラル層を中心にだと思うが、あらゆる宗教や人種がアメリカにいるという理由で「Happ…

旅と自由

ブログに書いたかどうかは忘れたが、以前、散歩中に迷ったことがあった。 その日は大学の授業が13時30分からあったのだが、昼食の海鮮丼定食を待っていたら、授業に5分ほど遅刻する時間になってしまっていた。その授業に魅力をあまり感じなくなってきていた…

インド映画の効能

今年一の大発見は、人間はやはり弱いのだということだった。もちろんそんなことはわかってはいたわけだが、やはり弱い。いつでもやる気に溢れることなんてできないし、打開する道を見出すことも容易ではなく、くじけてしまうこともままある。心の奥の灯火が…

国を作る

京都のバーには、新撰組由来の名前のカクテルが置かれていた。近藤勇、土方歳三、藤堂平助、原田左之助などなど。土方歳三を飲んでみたが、ジンジャーが強く効いていて、キリッとした感じがどこか「鬼の副長」と呼ばれて恐れられた土方の人となりを表現して…

説明責任の時代

現代は、説明責任の時代のように思うことがある。 もしかしたら、近代もそうだったのかもしれない。だがわたしは19世紀人ではないし、そのあたりはよく知らない。とにかく言いたいのは、今の世の中が説明責任を求めてくる時代だということである。 例えば、…

アジアの香り〜大阪〜

初めての大阪だった。 というと、驚かれることが多いが、国内旅行そのものが、3年ほど前に行った函館以来だったのだから、大阪が初めてでもおかしくはない。だが、不思議なのは、私は関西系のルーツしか持っていないにもかかわらず、大阪という土地に行った…

餃子は回る

実は昨日、父の誕生日があって、そのお祝いということで母とトルコ料理を作った。できはなかなかで、本物を食べたことあるのは私だけだったが、再現度としては90パーセントくらいはいけていたと思う。作ったのは、トルコの餃子マントゥと、レンズ豆のスープ…

カレーなる道

今年から大学でヒンディー語を始めた。理由は割とテキトーで、今までやったことがなかったのと、インドを背負う大言語であるのと、文字の関係で自力での学習が難しそうだと判断したからだった。しかしこれが思いの外楽しく、そこから芋づる式にインドにはま…

18都市目:モスクワ(2)〜До встречи!〜

トゥヴェルスカヤ通りの付け根にある革命広場駅から、スモレンスカヤ駅を目指す。相変わらずエスカレーターが深い。ゆったりとした旅なら良いが、アルバート通りでパッと食べて、クレムリンに戻ってきたかったので、これが鬱陶しい。革命広場駅は、装飾が無…