読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

Play Back〜ハードボイルド大学生活〜

ある大学生の日常をハードボイルドなエッセイ調に書く。

アンラッキーデイ

誰にだってツイてない日の一つや二つある。わたしにとってのそれはまさに今日だった、それだけのことだ。

月曜日は五百円で名画をみる。それが私の一週間のスタートだ。家を9時に出て、某シネコンへと向かう。今日もそうだった。まず異変を感じたのは入り口でのことだった。というのも、普段午前十時というと映画館はガランとしているからだ。しかし今日は違った。金曜日も、そして今日も元気に大学があったから忘れていたが、世間はゴールデンウィークとやらだったのだった。私は頭の中で思わず、スターウォーズのハンソロの口癖をつぶやいた。「I have a bad feelin' about this...(嫌な予感がするぜ)」

案の定、映画は完売していた。観ようとしていたのは「追憶」。「追憶の森」ではないのだし、そこまで有名と言うはずもないし、数十年前の映画だし、完売というのは想定外だった。腹いせに、10:45からの「アイアムアヒーロー」を見てやろうかと思ったが、さすがに授業に遅刻はできまいと、映画館を立ち去った。

かくして私は散歩を始めた。行くあてもない。昼にはまだ早い。とにかくウロウロしてやろうと決めた。するとなかなか良さそうなタイ屋台料理の店があるじゃないか。昼にはまだ早いので覚えておくだけ覚えておいて、その時は立ち去った。

歩いているうちに、その場所からしばらく歩いたところに日本で唯一のウイグル料理店があることを思い出した。そして私はそこへ向かおうと考え、しばらく歩いた。太陽は照っていないのになんだか暑い。しばらくして静かで、それでいて活気のあるいい街に辿り着いた。その町こそ、ウイグル料理の店があるところだった。店の場所は歩いても見つけられそうにないので、とりあえず、五月の頭にして早くも速度制限をかけられたポンコツケータイを取り出し、検索した。数分経って出てきた画面にはこう書いてあった。「定休日:月曜」。ここまで歩いてきて、定休日である。

さて困った。途方に暮れながらわたしは腕をまくった。暑かったのだ。その時思い出した、タイ料理屋があったじゃないか。きっと神は自分の足で見つけた店へ行けと導いているのだろう。わたしはすぐに例のタイ料理屋のそばへと舞い戻った。

店が見えてくるところに来たとき、わたしはまたもあのセリフを脳内で唱えた。「I have a bad feelin' about this...」

店の前に人だかりがある。店内を覗くと席が埋まっている。待っていても良かったのだが、あと一時間以内に食べ終わらねばならない時間帯になっていた。さてもはや笑うしかない。だが笑うと変質者と思われかねないので笑うのは避けた。わたしはやけくそになりながらその道を駅の方向に歩いた。

そんな時、わたしは台湾料理の店を見つけた。よさそうなところだったし、やけくそも幸いし、瞬時にその店に入った。

「イラッシャイマセ!」

店のお姉さんが笑顔で言った。わたしはテーブルにつき、見たことの無い「台南担仔麺」なるものを頼んだ。大衆的な感じの店内はとてもよかった。家族で経営しているような感じで、厨房のお兄さんとおばちゃん、テーブルでタバコを吸うおっさん、そして店番のお姉さんは何やら台湾語で会話をしている。勤務中に電話やメールまでする。嫌いな人もいるだろうが、わたしは好きなのだ。いつかいったヴェトナムやタイでよく見た光景を再び見ることができたような気がした。

さて、期待に胸を膨らませていると、ラーメンのようなものが来た。濃い色のスープに中華麺、上にはナッツだか、肉だか、何やらカリッとしたものが載っている。ひとくち麺を食べてみてわかった。神の真意はここにあり、と。うまいのだ。ナッツの香りが効いたそのスープと麺は最高に美味かった。ものすごい集中力でそれを平らげた後、デザートとして付いてきた、謎の寒天スイーツを食べたら、これもまた美味しい。さっぱりしていて、ライチだか、レモンだかの風味がある。割と濃い担仔麺の後に食べると非常にスッキリする。この店でこの料理を食べさせるために、神はきっとわたしに災難を与えたのだ。そうに違いない。

後で気づいた。熱いスープを飲んだので、口を火傷していた。

そしてその後の授業では、ペンのインクが途中で切れてしまった。

台南のラーメンはうまかったが、神は甘いだけではないようである。

それでは。