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旅、映画、食べ物、哲学?

さようなら、短い一週間

更新しよう、更新しようと思いつつ、書きあぐねている間に滞在期間の一週間が過ぎてしまった。そういうわけで私は今、再び、台北の松山機場にいる。出発まであと一時間ほどあるので、満を持して書こうと思う。

一週間に及ぶ一人旅は、実を言えば私にとって初めての体験であった。だが、使い古された言葉になるが、終わってみるとあまりに短かったと思う。

それは一つは、台風のせいもあるのかもしれない。三日目に台湾南部を台風14号「莫蘭蒂」が襲った。テレビのニュースで知ったが、台湾南部のとした顔が多大な被害をこうむったという。そして昨日、つまり台湾滞在六日目には台風16号「馬勒卡」が今度は台湾の東北部を襲っている。こればっかしは、台北も大雨と暴風雨に見舞われていたのを、身を以て知っている。昨日窓に雨が風にあおられて叩きつけられていたし、一度外に出た時も、ものすごかった。とはいえ、そんな台風も、幸運なことにあまり大きな被害を私の周りでは起こさなかったし、意外なことに、できるだけ外出を控えていた台風の日も、なかなか楽しく過ごせたのだった。だから、今回の一人旅に、台風はそんなに大きな影響は及ぼしていなかったとも言える。

では、なぜこうも短く感じるのだろう。

見るべきところは基本的に見たと思う。台北の保養地でデートスポット「淡水」にも(悲しいかな)一人で行ったし、有名な「故宮博物院」にも行った。「行天宮」という台北の人々の信仰の地にも行き、「臨江街」・「華西」・「士林」の三つのナイトマーケットにも繰り出した。ホテル最寄の「国立台湾博物館」も本館分館両方行き(分館の方が楽しい)、「台湾総統府(旧台湾総督府)」も見たし、孫文を記念する「國父記念館」、蒋介石を記念する「中正紀念堂」もくまなく見て回った。「台北101」は登りはしなかったが下からは眺めたし、台湾の代官山「永康街」や若者文化の発信地「西門町」などのオシャレスポットにも行ってきた。おそらく、これは「旅行」としてはかなり十分満足できるものだっただろう。だが、なんとなく、まだ消化不良が残るのである。

それはきっと、徐々に慣れてきたからだろう。初めは、頑張って拙すぎる中国語をしゃべったりしながら体当たりで店に入っていったりして、そして半ばではそんな生活に疲れ、そして今、やっと慣れてきて、これからもっと楽しめそうだという時に帰国だからこそ、この度は非常に短く感じられるのだ。もう少しいればもっと台北を感じられる。見るだけじゃなく、もっと感じられるはずなのだ。まだ何度も行く常連の店も作っていない。どこの「牛肉麺」(ニュウロウメン:台湾名物でこれがうまい。値段は500円くらいが相場)が一番うまいのか、どこの「魯肉飯」(ルーロウファン:ものすごく安くてうまい。120円くらい。ただ、量が少ないのでお腹がすく)が一番肉たっぷりなのか、まだつかみきれていない。それに何より、台北の人ともっと交流がしたかった。食堂での会計のやり取り、あとは一度だけ日本語が話せるおっさんと電車の中で話しただけだ。もっといろいろなことを聞きたかったし、もっと聞くべきだった。

私にとって旅をすることは、たぶん成長しようとすることだ。日本ではうまく解放できない、この20年間で「出来上がってしまった自分」をもっと解放し、もっと自由になりたい。だからやってみて、反省し、またやってみて、反省する。私は基本的に簡単にグイグイいける人ではないので、そんなことの繰り返しである。だからこそ、一週間は短いのだ。せめて二週間あれば、三週間あれば、と思う。なぜなら、街を見るのではなく、感じたいからだ。

だが、そんな消化不良感はありつつも、やはり楽しかった。それも、一週間が短く感じられる一つの要因だろう。どれが一番うまい牛肉麺かわからないくらい、どの店も牛肉麺はうまかった。それだけじゃない。どの店も、(淡水で食べたイカの揚げたやつ以外は)食事が最高にうまかったのだ。もっといろいろ試したかった。もっとここにいたい。そうすればもっといろいろな面白いものにも、うまいものにも出会える。そう思うと、まだいたいという気になるのだ。

私の乗る飛行機は、おそらく、台風と同じ軌道で飛ぶ。だから、実は今到着遅れによる遅延が起きている。だがなにはともあれ、行かなくてはいけない。次の旅に行くには帰らないといけないからだ。

 

そんな短い一週間の台湾滞在記については、また帰国してから徐々に投稿して行こうと思う。だから、(誰も期待なんざしてないかもしれないが)乞うご期待。