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Play Back〜ハードボイルド大学生活〜

ある大学生の日常をハードボイルドなエッセイ調に書く。

Fifteenth Night PART3

「昼の夜市とジャズバークエスト」

国父記念館から、昼の臨江街夜市へは、大した道のりではない。曇りだったから日差しも大した事はないし、かなり広い大通りを伝ってゆけば、いつの間にかたどり着く。途中で派手でゴテゴテとした中国式神社があり、そこのすぐ隣が、夜市のメインストリートだ。

 

朝に比べて、少々人足は減っていたが、昼の市場もかなり活気があった。わたしは食事場所が並んでいる、ひときわ汚いエリアへと向かい、目つきの鋭いおばさんがやっている屋台に並んでみた。一番人が並んでいたのだ。ただし、何を頼めばいいのか全く見当もつかないので、事前に知っていて、今まで食べていなかった「魯肉飯(ルーローファン)」なるものを食べてみる事にした。

「うぉーしゃんやお、るうろうふぁん(ルウロウファン、クダサイ)」

というと、おばさんは一瞬、「?」という表情を浮かべたが、数秒後にわたしの発音が悪すぎる中国語をなんとか理解したらしく、

「你想要魯肉飯嗎?(ルーローファンが欲しいのね?)」と聞き返してきた。わたしはとりあえず頷く。叔母はさんはまた何やら聞いてきた。全く理解ができないので、「?」という表情を浮かべると、向こうの方を指差し、その後で地面を指差した。なるほど、ここで食べるか、それともテイクアウトかと聞いているのだろう。わたしは地面を指差し、ここで食べる事を伝え、料理が出るのを持った。数秒で、小さなお椀に入った魯肉飯が出てきた。わたしは屋台に貼ってあった紙に書いてあった「30元」を払った。するとおばさんはまた何やら言った。わたしはまた「?」の表情を浮かべる。おばさんは今度は屋台の向かい側にあった、食堂のような場所を指差した。ああ、あそこで食べるのか。わたしは

「しえしえ(アリガトゴザマス)」

と言って、食堂へと向かった。

といっても、本当にここで食っていいのかよくわからない。というのも、あの屋台以外にも、食堂のそばにいろいろな屋台が立っていて、もしかするとどこか別の屋台の食堂かもしれないような雰囲気があったからだ。だが、間違っていたら、誰かが何かを言うはず。わたしはとにかく椅子に座り、初めての魯肉飯を口にした。見た目は牛丼。だが肉が薄切りではなく、でかいままドンと置かれている。

食べてみると、とてもうまい。現状、台湾で食べたもののうち一番にうまい。柔らかく煮込まれた肉が、無数の豆腐のようなものと、「台北味」とでも名付けられそうな、例の八角香る茶色いタレで味付けされ、白米の上にボトンと乗っている。ご飯と肉、その相性はぴったりで、口の中に入れれば、肉はトロけ、香りが口いっぱいに広がる。使い古された表現だが、箸が止まらなくなるのである。

一瞬にして食い終わり、わたしは皿を、食堂の端で食器を洗っているおばさんに、「しえしえ」と言って渡し、市場に出た。まだ何か食えそうだ。

 

だが、結論から言うと、そのあとは何も食べなかった。色々ありすぎて、目移りしているうちに、食欲がどこかに行ってしまったのだ。「総統饅頭」という謎の肉まんや、普通の肉まん、餃子、涼麺(本場の冷やし中華)……。どれも旨そうだったが、どうにも店に入る気になれなかった。やはり言語の壁に疲れつつあった。

結局、わたしは果物屋で「檸檬愛玉(リーモンアイユー)」という台湾スイーツを買って食べただけだった。いや、食べたというよりも、飲んだという方が正しいだろう。というのも、このスイーツは檸檬ジュースに、寒天のような「愛玉」を入れて、ストローでチュルチュルっとすするものなのだから。これがさっぱりして美味しい。だが問題点もある。これをすすったら最後、お腹がいっぱいになってしまうのだ。そういうわけもあって、わたしは昼の市場で他には何も食べなかった。潮時のような気がしたので、わたしは市場を離れ、駅へと戻った。

 

天気は好転していた。曇り空は晴れ空に変わり、むしっとした暑さが吹き返して、むしろ増していた。わたしは、次の台風がやってくる前のこの晴れ模様をなんとか活用したくなった。そうだ。夜にジャズバーに行こう。わたしはそう思った。

ヴェトナムを旅した時、わたしは友人とともに、ジャズバーに入った。偶然見つけたところだったが、かなり良かった。ヴェトナム一のサックスプレーヤーがたまたま出演していて、旅の中でのちょっとした刺激となった。台湾滞在四日目にして、少々、早々、疲れが出始めていたわたしにとって、ジャズバーのようなちょっとした洗練された空間の刺激が必要な気がしたのだった。

 

そのあとは、ガイドブックをめくっていて見つけたジャズバーを探し出そうと奮闘し続けた。台北101/世貿中心駅でおり、なんとかそのジャズバーを探すべく、歩きに歩いた。だがなかなか見つからない。その途中で、「台北最後の秘境」ともいうべき、昭和の日本がそのまま残っているような場所に遭遇したり、いまだ正体のわからない建設中の螺旋状ビルを発見したり、きみのわるい銅像を見つけたり、かなり面白かったが、肝心のジャズバーは姿を現さない。わたしはwifiスポットへ行き、最終手段、「グーグル先生」を頼ることにした。すると、入り口がわかりづらいところにあることがわかり、最後には場所を確認できた。だがかなり体力を消耗していたので、わたしはとりあえず、ホテルへと戻ることにした。夜に向けて、だ。