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ある大学生の日常をエッセイ調にかっこつけて書く。

街が生きている(赤坂)

東京の面白いところは、いろいろな場所によって、それぞれの個性が光っているところだと思う。新宿には新宿の、四谷には四谷の、麹町には麹町の、丸の内には丸の内の、八重洲には八重洲の、銀座には銀座の、有楽町には有楽町の空気がある。ちょっと離れるだけで、まるで異国のような雰囲気がある。疑う人がいたら、日本橋から上野に行ってみるといい。もう、全然違う文化圏に移動したような感じがするはずだ。

その中でも、赤坂という街は独特で、僕の好きな街の一つでもある。そして、実は今、僕は赤坂にいるのだ。

赤坂は、僕の生活圏内から近く、よく立ち寄る場所である。特に金曜日の昼は、休み時間がだいぶあるため、赤坂まで足を延ばすことが多い。もちろん今日も、それが理由で赤坂にいるっていうわけだ。

江戸城の外堀を超えて、横断歩道を渡ると、赤坂の街が始まる。細いタイル張りの道が適度に汚いビルの間を突き進んでゆく。道は碁盤の目のようになっていて、赤坂で迷うということはおよそないだろう。だけど、南北に走る道と、東西に横切る道(というか小さな路地)では、これまた雰囲気がだいぶ違って、歩いているだけで楽しくなってくる。南北に走る道にはスペイン、イタリア、タイ、イギリス、中国、韓国、国内では大阪、名古屋などなどのいろいろな「文化」を表現するレストランやらバルやらパブやらが立ち並び、東西に横切る道にはひっそりと昔からあったんだろうなというような小料理屋やすし屋などが生きている。

赤坂の道を歩いていて気づくのは、そこが適度に汚いことだ。ビルも、道も、どことなく「使用感」がある。坂のせいで、碁盤の目のようになっているはずの道も、どことなく歪んでいる。ちょっとだけいびつで、ちょっとだけ汚い。道に並ぶ店も統一感はなく、イギリス式のパブがあったかと思えば、料亭があったり、料亭があるかと思えばタイ料理屋があったり、かと思えばホテルがあったり、ちょっと卑猥な店があったり、とにかくごちゃごちゃしている。だがこのごちゃごちゃ感こそ、「街が生きている」証拠なのだ。東京の街は多様な文化を持っているとはいえ、徐々に綺麗になってきていて、このごちゃごちゃ感を出せる街並みは少なくなっていると思う。そんな中でも、赤坂はごちゃごちゃ感、適度な汚さを保ち、街をエネルギッシュに保ってくれている。だから、僕はこの街が好きなのだ(ただし、夜歩くのはちと怖いかも)。

赤坂はかつて、高級住宅街だったという。江戸時代には大名屋敷(今でいう「大使公邸」「大臣公邸」)や旗本屋敷(今でいう高級公務員の家)が立ち並び、明治時代には高級官吏や軍人のための料亭がたくさんあったという。戦後になると、大使館の人たちなどの外国人の遊び場として赤坂は発展し、キャバレーなどが出来上がり、1955年にTBSが本社を赤坂に構えると文化人やファッション関係の人の溜まり場となっていたという。おかげで、今の赤坂はまるでTBSの城下町のようである。TBSがちょっと小高いところにあるので、赤坂の城下町感が倍増している。

もちろん、本当はきっと、赤坂を挟んでTBSの反対側にある「日枝神社」の「城下町」なのだろう。日枝神社というのもなかなか面白いところで、神社なのにエスカレーターがついている。神社といえば長い階段のイメージがあるが(東照宮などにはすごく長い階段があるではないか)、なぜか日枝神社はそれを機械化、白い巨大な階段の隣にエスカレーターがあるのである。神社の中はかなり立派で明治神宮にも劣らないだろう。日枝神社の目の前の道は、赤坂の街のごちゃごちゃ感とは裏腹に、だいぶ整った大通りが駅の方へと貫いている。と、思わせておいて、並ぶ店はスペインバルに中國銀行アパホテルに、よくわからないドイツ語の名前の企業と、だいぶ異様な雰囲気を漂わせている。今日歩いていたら、派手な車が止まっていて、なんだろうと思ったら「ガーナ料理」の車だった。昼に台湾の「牛肉麵」をTBS城のお膝元で食ってしまっていたので断念したが、今度見かけたら、絶対に行ってやるから、待ってろよ、と心の中で捨て台詞を言って、立ち去った。

 

 

さて、以上が、僕の見た、いい意味で「ごちゃごちゃ」、エネルギッシュな赤坂の街の姿だが、今日新しい一面を見つけた。TBSの前を横切って、坂になっている「一ツ木通り」を歩いていると、「浄土寺」という寺があったのだが、そこが面白かったのだ。ビルの合間にぼんぼりが吊る下げてあり、中が入ってみると、参道があって、その先には寺があった。おばあさんとその娘がゆっくりと山道へと向かい、穏やかな風が流れていたその寺は、四方を住宅に囲まれていたのだ。まるで、昔の街のように、家が立ち並ぶど真ん中に寺がある。エネルギッシュな繁華街に見える赤坂にも、そんな穏やかで、別の意味での生活感にあふれたところがあるとは、想像もしなかった。吹けば飛びそうな寺だったので、ぜひずっと残っていってほしいなと思わざるをえなかった。

赤坂。今、朝ドラでも出てきている街。そこには生活とエネルギーとごちゃごちゃの文化がある。歩く人の人種もバラバラ。売っている食べ物もバラバラ。それでも隅っこには日本的な要素が静かにいきている。あの街は確かに、生きているのだ。

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浄土寺