2016-01-01から1年間の記事一覧
イタリアの首都ローマの街を歩いていた時のことだ。 独特の赤みを帯びたベージュ色、とでも言えるような建物が立ち並んでいる道を進み、わたしは古代ローマの神殿「パンテオン」を目指していた。だが一向にパンテオンは現れず、途方に暮れていた。季節は12月…
最後に少しだけ、最終日の話をしよう。後日談のようなものだ。 翌日のフライトは少しだけ遅い便だった。わたしは早めにチェックアウトしたが、ザック一つの身軽さだったし、どこかに行こうかとも思った。だが、それはやめたのだ。今回学んだ「旅することは動…
幸福は災難の内にあることがある。むしろ災難が起こるからこそ、幸福なのかもしれない。 台風16号「馬勒卡」がフィリピン沖に発生したのは、わたしが台北について間もなくのことだった。台風14号の影響がどれほどか、それを不安に思いながら始まった旅だった…
「旅することは動き続けることではない」 台湾は、「親日国」で知られる。どういう風の吹き回しかはわからないが、台湾の方々は、東アジアの海に浮かぶ優柔不断で調子に乗りやすいしょうもないあのJで始まる島国のことを、それなりに認めてくれているらしい…
「旅はDéjà vu:新しいものと古いもののあいだ」 ほんの思いつきだった。ただただ、名前が面白かっただけだ。ただそれだけの理由で、わたしは台北MRTに乗って、「三重」に行った。 台北市の中心部は、主に「淡水河」右岸にある。三重があるのはそこから離れ…
「フィールドワーク」 行天宮というのは、「関帝廟」の一種である。といわれても、「関帝廟」ってなんだろう? 関帝廟というのは、三国志で有名な関羽を武功と商売の神として祀る神社だ。関東に住む日本人にとっては、横浜中華街にある「関帝廟」が有名だろ…
「タイペイ・ダック、あるいは変わらぬもの」 台北駅へと引き返したわたしは、一つの疑念に心惑わされていた。それは、両替ができるかもしれないただ一つの希望の光である「三越」も、中秋節で休みなのではないか、ということだ。三越といえば、日系企業。さ…
「It is hard for me to exchange money」 嵐の前の静けさは、台湾の灼熱の太陽の前では、嵐の前の激しさに変わる。その話はこの前にもしたはずだ。だが、それをまた経験することになるとは思ってもいなかった。 台北滞在五日目 台北滞在四日目の夜は、前述…
「Fifteenth Night」 一畳一間のホテルで休息を取り、外に出てみると、もう真っ暗になっていた。台北の夜は6時に始まる。 この日の夜はジャズバーへ行こうと決めていたが、ジャズの演奏は9時半からで、それまでの間は、昼に行った「臨江街夜市」の真の姿(夜…
「昼の夜市とジャズバークエスト」 国父記念館から、昼の臨江街夜市へは、大した道のりではない。曇りだったから日差しも大した事はないし、かなり広い大通りを伝ってゆけば、いつの間にかたどり着く。途中で派手でゴテゴテとした中国式神社があり、そこのす…
「PATER PATRIAE」 昼間の夜市を離れて、わたしはテキトーに歩き始めた。 今思うと、あの時はどこか、中国語を使うことに疲れていたように思う。市場のエネルギーはわたしのエネルギーをチャージしてくれたが、結局のところ人と話してみようなどということは…
「NIGHT in DAY」 朝起きてホテルの窓の外を眺めたら、青空だったものだから、てっきりこれが台風一過の晴れ模様だと思っていた。だが、朝食を食べ、ホテルの外へ出るとそうでもないとわかったのだ。空は雲で覆われ、時折雨も降る。わたしはとりあえずビニー…
フィリピン沖で発生した「莫蘭蒂」こと台風14号は、その勢力を拡大しながら台湾へと迫っていた。初めは台湾に上陸する予定だったが、神のご加護か、単なる偶然か、進路を南よりに切り替えて、台湾の南側をかすめて行くルートをとることになっていた。 だが…
「Tansui、あるいは暗雲」 台北郊外にあるちょっとした保養地「淡水(タンスュイ)」は、台北中心地から40分ほどで行ける距離にある。日本でいうなら、どうだろう、鎌倉といったところだろうか。だが、アクセスの良さは圧倒的に違う。というのも、「台北101…
「嵐の前の激しさ」 再びガタガタと揺れるバスに乗り、わたしは「士林(チーリン)」駅へと引き返した。昼食の時間だ。わたしは灼熱地獄の中、食べ物屋を探す。そうだ、士林観光夜市まで行ってみよう、と思った。せっかく士林にいるのだ。夜市と言ってもきっ…
「文化の宮殿」 士林(チーリン)は、市場で有名らしい。人呼んで士林観光夜市。だが、非常にややこしいことに、士林観光夜市の最寄り駅は「士林」駅ではなく、先ほどまでわたしがいた「劍潭(ジエンタン)」駅らしい。 嵐の前の静けさで晴れ上がっていたこ…
「はじまり」 台北滞在二日目 嵐の前の静けさ、という言葉がある。それは、暴風雨が来る前に穏やかな気候になる、という現象からくる比喩だ。暴風がくるからこそ、暖かく、穏やかな天候になる。それはかえって不気味なことで、まるで神が未来を私たち人間に…
更新しよう、更新しようと思いつつ、書きあぐねている間に滞在期間の一週間が過ぎてしまった。そういうわけで私は今、再び、台北の松山機場にいる。出発まであと一時間ほどあるので、満を持して書こうと思う。 一週間に及ぶ一人旅は、実を言えば私にとって初…
志はあるが、全てを支配し尽くすことはできない。だから小さな島を分捕って、そこに理想郷を作る。そんなストーリーはわたしの憧れだった。だから、榎本武揚がその地に共和国を作ろうとした北海道、そして鄭成功や蒋介石が夢を託した台湾は憧れの土地でもあ…
カナダで私1人が経験したことは、ケベックシティの一人旅だけではない。今日はその話をしよう。 ケベックシティ一人旅の翌日のことだ。まずはみんなと再会を果たし、みんなで朝食を店で食べ、そのあとは何をしたのかいまいち覚えていない。昼食の時間になる…
そろそろ、今まで書いていなかったことを書こうと思う。それは、ケベックシティへの一人旅の話だ。 今回のプログラムでは、二週間目の週末に、それぞれがオプションでアクティビティーを選んで参加できるようになっていた。ナイアガラの滝旅行、ネイチャーア…
すべてのものには始まりがあって終わりがある。某国民的アイドルグループが解散を発表し、今年もオリンピックが幕を下ろしたように。永遠に続くものなどはなにもない。全ては始まり、そして終わりへと向かって行く。それを私たちは黙って受け入れるしかない…
みんなでしゃべったりしながら、いろいろなところに行くのは楽しいことだ。ふざけてみたり、笑ったり、色々と話したり、なかなか楽しい。わたしは喋るのが好きだし、わりと寂しがり屋だからだ。 だが、個人行動ほど楽しいものもない。一人宿舎を抜け出し、喧…
ケベックのモントリオール滞在五日目。 モントリオールは快晴である。青い空、白い雲、とはまさにこのこと。太陽の光が道を歩く私たちにググッと差し込んでくる。多少蒸してはいるが、過ごしやすい。ここの気候は気持ちのいい5月を連想させる。 今日、わたし…
さて、カナダはケベック州のモントリオール滞在もいよいよ四日目と相成った。 授業も始まり、カナダ文化のこと、英語の発音のこと(かなり体系的にやっている。おお、さすが大学生、という感じの授業である。まさかカナダに来て「前舌音」「後舌音」「硬口蓋…
突然だが、わたしは今カナダのモントリオールにいる。語学研修というやつで、三週間滞在することになっている。それで今日は二日目だ。本当は昨日の話を昨日書こうと思っていたのだが、ものすごい眠気によってそれは辛くも中断せざるをえなくなった。 1日目…
二週間ほど前、風邪をひいた。 夏風邪の時期だ。珍しいことではない。 「あなたの風邪はどこから?」というコマーシャルがあるが、わたしの風邪は鼻からである。あの時も、部屋にいたら突如としてくしゃみを10連発ほどし、それから滝のように鼻水が流れ始め…
そこにはやはり予感というものがあった。 いつもと変わらない姿を見せているように見えても、実はそこには刻々と迫る終わりの時の予感があったのだ。寂しげな、その予感が。 昨日、わたしは新宿の南口にある紀伊国屋書店へ足を伸ばした。 紀伊国屋は新宿に大…
ここ数日、いや一ヶ月以上になるが、ここに投稿していなかった。この一ヶ月何もなかったわけではない。それどころか、いろいろなことがあった。まず先月の18日、わたしは無事二十歳になった。そしてその少し前見た「ハリーとトント」という映画はなかなか良…
今日、TOEFLを大学で受け、その帰りにトルコ料理屋に寄った。 そのトルコ料理屋は、わたしがエスニック好きになるきっかけを与えてくれたところだった。思えば去年の春、わたしは独り、あの非常に入りづらい、物理的な意味での「狭き門」を押し開け、エスニ…