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旅、映画、食べ物、哲学?

日常

本質と音楽〜哲学所感3〜

まずあらかじめ断っていくが、今回は少々突飛なことを言おうと思う。日常生活で普通とされていることを裏切ろうとしているのである。だがそれは必要な裏切りだ。そして素晴らしい裏切りだと私は信じている。 その前に、ちょっと話を振り返っておこう。第一回…

スキマ時間と安息日

ここ最近ずっと違和感を覚えている言葉がある。それは、「スキマ時間」だ。CMを見ると、よくこんな言い方がされているのが耳につく。「スキマ時間を利用して……」「そのスキマ時間もったいない!」それはだいたい、ニュースアプリだったり、バイトアプリだっ…

立場と発言は切り離せるか

二週間前くらいだったと思うが、「立場と発言は切り離せるか」というテーマで哲学対話を行った。例えば、警察官の子供が、もしとても道徳的ないし法的に正しいことを言ったとする。そうすると、周りの人は、「おとうさん警察官だもんね」というだろう。一方…

映える写真、臭わない記憶

時々、Facebookなどを見ると、誰かの旅行先の写真が載っていることがある。稀に、そうした写真の一部は、私も以前行ったことのある土地のもので、そうすると、ちょっと見てみようかなという気持ちになる。だが大抵の場合、言いようもない違和感が待ち構えて…

『最後の審判』とカツレツ

誰しも教訓となることの一つや二つある。かのシャーロック・ホームズも、自らが尊大な振る舞いをしたら、自身の推理が外れた事件を思い出すために「ノーバリ」という地名を耳元で囁いてくれ、と言っている。エルキュール・ポワロにとってのそれは「チョコレ…

イヤフォンについて

ポータブル型の音楽機器が発明されて、私たちはどこにでも音楽を持ち運ぶことができるようになった、と言われる。それまでは音楽はでかいスピーカーから流れるものだった。いやもっと昔に戻れば、楽器から発せられるものだった。そういう意味で、確かに現代…

An Invitation from Mr Blue Sky and Madame Pluie

An Invitation from Mr Blue Sky 例えば、家の外に出たら空が見えるだろう。その時、空が雲ひとつなく青かったとする。青かったというのは正しくもあり、間違いでもある。色のニュアンスは言葉で説明しきれない。だからここで「青かった」というのは、公認さ…

南米かっ!〜アテネの夜の冒険〜

アテネのホテルはびっくりするくらいいいところだった。一人三千円くらいだが、中高級ホテルの風格がある。それに真っ先に気付いたのは、着いて早々ウェルカムドリンクとしてしぼりたてのオレンジジュースが配られた時である。暑かったし、ありがたい。ウェ…

時間と時の流れのせめぎ合い

前々から思っていることなのだが、私たちは二つの時間を生きているのかもしれない。一つは社会的な時間で、もう一つは私の心の奥を流れる時の流れである。そのようなことをいうと、難しいことを言っていると思うかもしれない。しかし、実はそこまで変なこと…

インド映画の効能

今年一の大発見は、人間はやはり弱いのだということだった。もちろんそんなことはわかってはいたわけだが、やはり弱い。いつでもやる気に溢れることなんてできないし、打開する道を見出すことも容易ではなく、くじけてしまうこともままある。心の奥の灯火が…

16都市目:パリ(4)〜Time To Say Goodbye〜

ジャズクラブでパリの夜を締める前、私は移民街散歩を敢行した。もともと移民街という場所が好きだった。それは単純にこの前パリに来た時に移民街に泊まっていたからかもしれない。前回のパリでは、私はパリ北駅からより北上し、インド人街を抜けたところに…

16都市目:パリ(3)〜Comme le temps passe〜

パリのアパルトマンを出た後は、哲学科としては外せない、パスカルの故郷「クレルモン=フェラン」へ行く予定だった。しかし、パリのアパルトマンで、皆気が変わってしまった。パリは五日では回れないのだ。さらにパリは魅力的だった。だから、私たちはパリの…

16都市目:パリ(2)〜俺たちのヴォージラール、そしてエッフェル塔〜

前にも書いたが、私たちはパリにアパルトマンを一室借りて、5日間住んでいた。日本の「パリ生活社」という会社を使ってネットで予約したため、説明書きが日本語だったし、問題もなく入居できたのがよかった(ちなみに、実は現在私は友人と京都の一軒家に三日…

16都市目:パリ(1)〜再会〜

この度の実質的最後の滞在地パリは、再会の街であった。そもそもパリという街自体、再会の相手だった。今まで巡ってきた街は、リヨンを除けばどこも初めての場所だった。しかしパリは4度目になる。そしてそんな街でわたしは5度にわたる再会の場に立ち会った…

12都市目:ボルドー〜ボルドーの人々〜

アンダイエの街には数時間いたが、外には出なかった。理由はない。駅の中で次の街ボルドーでのホームステイ先の人とメールをしたり、本を読んだりしていた。ふと目をやると、赤い看板のキオスク「Relay」や、価格帯が高めの自販機「Selecta」が置かれている…

11都市目:イルン(1)〜異邦人、あるいは旅の終わり〜

マドリードからトレドへ向かうバスとは、明らかに違う風景が外に広がっている。周りは緑、緑、緑。山も緑。ところどころにある建物は、白い漆喰で塗られ、屋根はオレンジ色だ。まさにバスク地方の道だ。日本人にとっては、マドリード付近の荒地が広がる風景…

10都市目:ビルボ(3)〜熱狂の街〜

ブラスバンドの音が聞こえてくる方へと歩いて行くと、そこには人だかりがあった。真ん中では四人はどのブラスバンドが楽器を弾き、1人の人が大きな黒い旗を振っている。最初は何事かと思ったが、そういえば祭りである。いわば、前夜祭といったところだろう。…

10都市目:ビルボ(2)〜はしごの夜〜

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。 本来なら、旅の第1部(8/10〜8/20)を書き終えて、新年の話でもしようかと思ったが、まだ終わっていないので、ビルバオの続きを話そうと思う。 さて、やっとの思いでホテルを見つけたわた…

9都市目:トレド(2)〜逢いに行けるアンダルス〜

ボカディージョを食った広場の目の前にある教会は異様にでかかった。巨大な尖塔は天に届かんばかりで、そこら中に彫られている聖人の像がこちらを見下ろしているが、像一人一人の大きさが規格外である。トレド大聖堂というそうだ。そのままである。 教会の横…

8都市目:マドリード(3)〜そうだ、トレド行こう〜

朝起きて、顔を洗う。窓の外では話し声が聞こえる。マドリードの朝か。窓の外は中庭で、住人たちが洗濯物を干したりする。それじゃあわたしも朝食を食べがてら洗濯物を始末してしまおう。 鍵をもらい、オスタルプラダを出たのは確か8:00くらいである。紹介さ…

7都市目:バルセロナ(5)〜ガウディとカタルーニャ広場、生命の街〜

ガウディは好きではなかった。あの、グエル公園にあるような、うねうねと曲がった土色の壁に斑点、そこに謎のトカゲ、というあの感じが苦手であった。だから、建築家ガウディの生まれた街バルセロナに行こうと決めた時も彼の作品をめぐるということはあまり…

7都市目:バルセロナ(3)〜マーレ・ノストゥルム〜

ランブラス通りには相変わらず気持ちの良い風が吹き抜けている。緑が輝き、平和そのものの雰囲気の中、時折スリがウロウロしていた。台の上に立ったピエロが風船で犬を作ったり、彫像に扮した男が道行く人にぎこちなく帽子を取って見せたりしている。楽しい…

街がいきづく〜一度きりの出会いと懐かしい香り:赤坂−溜池−六本木〜

今日も例によって昼の時間を潰すべく赤坂へと向かった。日差しは強いが、サイゴンほどではない。湿気はあるがバンコクほどではない。私には今日赤坂へと向かう確固たる理由があった。それは、「街が生きている」と題した記事の中でも触れた、赤坂に出没する…

ヴェトナムの方がやってきた

6月10日と11日は、代々木がヴェトナムになる日だった。5月ごろから代々木公園では、カンボジア、タイ、ラオスと東南アジアの国々を紹介するフェスが開かれ、6月10日と11日はヴェトナムフェスティバルが開催されていたのだ。 去年、一昨年と連続してヴェトナ…

思い出がいっぱい

「懐かしいって感覚って何なのか、気になってるんです」と、ある人が言った。この前の木曜日のことである。あの日、僕を含めた十人の年齢も性別も違う仲間で「懐かしいってどういうこと?」についてみんなで考えた。 その人はいう。この季節になると、空気に…

Money, Money, Money

数日前のことだが、NHKの「美の壺」という番組を見ていた。 この番組は、色々な芸術品、あるいは民芸とでも言えるような実生活に使われているようなものに焦点を当て、木村多江のしっとりとしたナレーションと、時々草刈正雄のコミカルな演技を交えつつ、そ…

過去の感じ方

イタリアの首都ローマの街を歩いていた時のことだ。 独特の赤みを帯びたベージュ色、とでも言えるような建物が立ち並んでいる道を進み、わたしは古代ローマの神殿「パンテオン」を目指していた。だが一向にパンテオンは現れず、途方に暮れていた。季節は12月…

the Big Slump

ここ数日、いや一ヶ月以上になるが、ここに投稿していなかった。この一ヶ月何もなかったわけではない。それどころか、いろいろなことがあった。まず先月の18日、わたしは無事二十歳になった。そしてその少し前見た「ハリーとトント」という映画はなかなか良…

常連もどき

今日、TOEFLを大学で受け、その帰りにトルコ料理屋に寄った。 そのトルコ料理屋は、わたしがエスニック好きになるきっかけを与えてくれたところだった。思えば去年の春、わたしは独り、あの非常に入りづらい、物理的な意味での「狭き門」を押し開け、エスニ…

手ぶら族の夏

わたしは基本的に手ぶらだ。もちろん、大学に行くときはバッグを持っているが、それ以外では手ぶらだ。かつてはそんなことが普通のことだと思っていた。少々男女差別的な発言かもしれないが、男は手ぶらなものだ、などと思っていたのだ。だが、高校から大学…